書評 「ADHD脳で人生楽しんでます!(あーさ著)」を読んで!
ここ十年ほどで、発達障害に関する解説本は、ものすごく増え(そういう意味では良い時代になったな)、初めて本を手に取ろうとする人はどれに手を付けていいか迷うほど。
この本は、著者あーささんが、幼い頃から現在までのご自身の生い立ちやエピソードを、面白おかしくギャグマンガにしたものです。
ADHDの特性について、詳しく解説されている本ではありません。解説本はコチラです。
Kindle版は2017年発売となっていますが、紙の方は2007年発売。だいぶ前になります。長く愛されているのでしょうね。
著者のあーささんは、「フロンティアADHD」という、漫画でADHDを解説するホームページを運用されている当事者の方です。YoutubeにADHD解説動画も配信されています。
思えば、僕が「自分にADHDの特性がある!」と確信したのは、大学を卒業して、この本に出会ってからでした。
紆余曲折しながらもなんとか大学に行き、卒業したはいいけれど、将来の方向性を見失いかけて途方に暮れていた時に、手に取った本。
この本の良かったところは・・・
とにかくわかりやすい!!!
ADHDの特性やよくある話、改善策などが、ものすごいテンションと勢いで、解説されているんです。
これを読んだのがきっかけで、僕は自分自身の事をもっとよく知ろう!と思い、本やインターネットで情報収集しまくるようになったのでした。同じような特性のある人達
のためのコミュニティ、当事者会の存在を知ったのも、この本がきっかけだったかと。
それからはや10年・・・だいぶ、子どもだけではなく、大人の発達障害について認知も広がった中、新刊が出るとの情報が。
「待ってました!!!」
それを知ったのは職場にいる時でしたが、スマホでAmazonのページを開き、すぐ注文しました。即買いです。
さて、本題です。あーささんのこれまでの歩みは・・・
幼少期・・・好奇心の塊で、目の前に飛び込んでくるものに何でも飛びついた。頭の中で自然に湧き上がる物語の絵を描くのが好き。
小・中学校・・・授業、遊び、図書館・・・好奇心を満たしてくれるものでいっぱい。漫画を書けるこれことで周りの子に注目されていた。
高校・・・人生初の停滞期。周囲との漠然としたズレや違和感を感じ始める。別に仲間外れにされてるわけじゃないのに、周りの子がお互いの気持ちを察し会えるのに自分は察することができない成績不振に陥ったが、通いだした予備校のビデオ学習がはまり、スランプから脱出し、志望校に合格。
大学・・・興味のある分野で勉強、ミュージカルの部活で自分を表現、寮生活も楽しんでいた。自室は、例に漏れずお部屋(笑)母に紹介されて読んだ本がきっかけで、自分がADHDだと気付く。
社会人・・・事務職に就いたが、仕事のミスや人付き合いで問題が多発。人生2度目の停滞期に。たくさんの失敗から、人の2倍3倍頑張るぞ!という気持ちで、次どうするかを考え「精神論より方法論」で、試行錯誤の末改善していく。
終始明るく、ポジティブに書かれています。笑えます。
でも、ただ面白おかしいだけではないのです。あーささんは、周りの人への感謝の気持ちを忘れない。「困ってる仲間たちを助けようと思ったら、逆に自分が救われた」と。とても素直な方なんでしょうね。
「気の合う友達の作り方」や、「価値観が違うもの同士がお互い穏やかに過ごすためのコツ」など、コラムに載っている内容も一読の価値アリです。
ToDoリストやタスクリストの活用など、ライフハック的なことも少し書かれていました。「一つの用事に対してそれぞれどれだけ作業量があるのか計算する」という記述があり、これはタスクシュート的だな、と感じました。
また、生きるエネルギーとしての活力についても書いてました。
「遊ぶ時間は心に活力を与える。遊びは心の点滴」
というフレーズ。
あーささん自身、興味のある事を色々やっておくとあとで役に立ったから、いろいろ種をまいておくのがいい、と書かれていました。
好きな事をしてる時が、一番幸せですよね。
そして、感動したところがいくつも。
「体はちゃんと動いてる。私の体は障害の部分より正常に働いている部分の方がはるかに多いんだ。当たり前じゃないことに気づくこと、それが感謝。これからは自分の脳と身体に感謝しながら生きよう。」
このくだりを読んで、自分も「できないこと」「苦手なこと」やマイナス面にいかにフォーカスしていたか、はっとしました。
目立つほど色々苦手はあるけれど、気付かないうちにどれだけ自分の体や頭が動いているか。そんなことを考えさせられます。
こんな記述も。
「人は人生を楽しむために生まれてきた。私達も障害を乗り越えるために生まれたんじゃない。ましてや他人と自分を比較してくよくよ悩むためでもない。新たな人生を楽しむために生きているんだ。」
ハンデがあろとなかろうと、それを克服することが生きることの目的でがないですよね。みんな、生きることを楽しみたい。
ADHDとか、発達障害というのはラベルにすぎません。もちろん自分を客観的に知るための枠組みとしては大切。
でも結局はそこにこだわり続けるのはなく、自分がどうすれば楽しく人生を歩んでいけるか考え、行動することが大切なんだな、と。
えじそんくらぶの高山恵子さんとの対談も載っています。
ADHDの特性をもった方の「生き方」について触れてみたい方は、必見です!!!
では、今日はこの辺で。